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cF#001 スーパーからの帰り道で神隠しに遭いかけた

これは、つい最近の話。具体的には、2週間ほど前の話。

仕事場のお盆休み中、朝から実家に顔を出しに行き、自宅の最寄り駅まで戻ってきた夜。数日分の食材を調達するべく、スーパーに寄ってから帰ることにした。

この街に引っ越してきてから数ヶ月経つが、自宅からいちばん近いスーパーとは馬が合わず、ないよりいいとはいえ少々困っていたところ、馬が合いそうな別のスーパーの存在を知った。すごく近いというわけではないがそこまで離れているわけでもなく、散歩がてら往復するには悪くない距離だったので、試しに行ってみることにした。

 

 

予め地図はチェックしてあった。私は地図を読むのが得意で、はじめて行く場所でも事前にルートを覚えてそのまま地図アプリ等を使わず辿り着くことができる。

 

 

メインの通りと大通りの交差点あたりを出て、とにかくいちばんわかりやすい道を通り、5~6分くらいで無事に着いた。

予想通り、こちらのスーパーとは馬が合ったので、色々と買い込んでエコバッグに詰め、まっすぐ帰ろうと思いながらお店を出た。

 

 

進行方向の右斜め前に進んでいけば、大通りに出てメインの通りの交差点まで行ける。このルートで帰ることにし、最初の小道を右に入った。

マンションとマンションの間の、ごくごく普通の住宅街といった趣の細道を進んだ、が、数軒過ぎたあたりから様子が変わりはじめた。令和のアパートではなく、昭和末期から平成初期あたりの雰囲気をまとう一軒家が両サイドに立ち並び、街灯の色も白からオレンジに。そして、行けども行けども大通りに出ないのだ。つけていたApple Watchを見るに、もう大通りどころかメインの通りまで戻っていてもいいくらいの時間が経っている。明らかにおかしい。が、不思議と引き返す気にはならなかった。

しばらく歩いていくと、ようやく突き当たりがあった。しかし、そこは大通りではなかった。その見知らぬ丁字路の左側斜め前に、小さなお社があった。何故かそこにだけスポットライトのような白くて明るい照明が当たっている。薄々気付いていたことが、そこで確信に変わった。「入ってはいけないところに入ってしまって呼ばれたんだな」と。

 

お社のお稲荷さんに挨拶をして、先に進むことにした。地図の通り……といってもこの状況では信用ならないのだが、だからといって他に選択肢もないので、大通りに出るべく引き続き右斜め前に向かった。

開き直って雰囲気を味わいつつ、地理的に意味のわからない謎の鋭角カーブを通りつつ、黙々と歩き続けていると、突然ぐわっと視界が開けたようになり、目の前には知っている景色があった。

 

繰り返すが、スーパーを出てからは大通りを目指して斜め右前に進んでいたはずだ。こんなところに着くはずがない。Apple Watchを見ると、お店を出てから数十分が経っていた。現在地と時間を確認して呆然としてしまったが、ちゃんと帰してもらえただけ良かったし、後ろを振り返ってはいけない気がして、そのまま帰路についた。

 

どうしてそんなところに行ってしまったのかはわからない。あのお稲荷さんに呼ばれたのか、たまたまそういう入口が開いたところを通ってしまったのか。

あのスーパーには今後も行きたいが、さすがに帰りのルートは変えようと思う。

 

ちなみに、Apple Watchはこの数日後に突然壊れてしまった。

 

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